生活習慣病
生活習慣病

生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症や進行に深く関与する疾患」を指します。様々な病気がありますが、本ページでは代表的な高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症について解説しています。
生活習慣病の発症には、個人の体質、社会的要因も大きく関わっています。生活習慣病という名称から「生活習慣」のみに焦点があたり、「自己管理できていない」「努力不足」といった否定的なイメージを周囲の方だけでなく、患者さん自身も持たれがちです。そうしたイメージは治療の障壁になることもあります。そのため今後は生活習慣病という呼称も時代とともに柔軟に変わっていく可能性もあります。
生活習慣病は自覚症状がほとんどなく、健康診断での数値の異常のみを指摘されて来院される方が多くいらっしゃいます。当院に受診されましたら、いきなり薬を開始するのではなく、ご自身の健康状態を正しく理解していただき、無理なく続けられる治療を提案していくことを大切にしています。
血圧とは、心臓から送り出される血液が血管の壁にかかる圧力のことです。心臓が収縮する時に血圧は高くなり、拡張する時には低くなります。血圧を計測すると2つの数値が表示されるのは、収縮期血圧と拡張期血圧という両方の血圧を調べているからです。自宅で測定した血圧が収縮期で135mmHg以上、または拡張期で85mmHg以上の場合に高血圧症と診断しています。ただし、1回の測定だけで判断するのではなく、複数回にわたる測定結果をもとに判断することが大切です。
高血圧の状態が続くと、心筋梗塞、心不全といった心臓の病気、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、腎臓の病気のリスクが高まります。これらを予防するためにも、適切な血圧値を維持することが重要です。治療は、まず食事の改善(減塩やバランスの良い食事)や適度な運動といった生活習慣の見直しが基本となります。お薬を用いずに血圧を管理することもありますが、患者さん一人ひとりの状態に合わせて血圧を下げるお薬を選ぶことが大切です。
高血圧は一般的には明確な原因がないものが大半ですが、なかには他の病気が原因で高血圧にいたることも知られています。代表的なものがホルモン、腎臓の血管の病気であり、そのような病気が疑われましたら、病院での追加検査が必要になることがあります。また、睡眠の質が悪いと高血圧症になりやすいことも知られています。睡眠時無呼吸症候群(就寝中に無呼吸、低呼吸が生じる病気)が見つかればマスクを用いた治療(CPAP シーパップ)も行っています。血圧が気になる方や治療についてご不安がある方は、是非ご受診ください。
糖尿病とは、ご自身の体から分泌されるインスリンというホルモンの量が少なかったり、働きが悪くなることで、血中のブドウ糖が多い状態が長く続いてしまう病気です。糖尿病には生まれつきインスリンを出す力が低い1型糖尿病を含みますが、95%以上は生活習慣が強く関与する2型糖尿病に分類されます。
糖尿病は、のどが渇く、のどが渇くために水分を多く摂る、尿の量が増える、といった症状があります。一方、無症状で進行することも多くあり、自覚症状が現れたころには、ある程度進行していることもあります。病気が進むと四肢のしびれ、目の見え方への影響、腎臓への影響が生じます。心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる血管の病気を引き起こす可能性も高まります。そのため無症状であっても検査をして早期発見することが大切です。
治療の基本は生活習慣の改善であり、その中でも特に重要なのが食事療法です。1日の摂取カロリーを適切に調節することが基本となります。ただ「甘いもの」や「揚げ物」を一切禁止するのではなく、これまで習慣化していた食事内容を無理なく減らし、継続しやすい方法で食事療法を行うケースが多いです。また、内服治療だけでなくインスリン治療も行っています。さらに、インスリン以外の週1回の注射(GLP-1注射、GLP-1/GIP注射)や、ご自宅で行える新しい血糖測定方法(フリースタイルリブレ®)など、治療の選択肢が増えてきています。患者さんの病状、ライフスタイルに応じた最適な治療を提案できるようになっています。診断時の病状によっては、入院を含めた詳しい検査や治療が望ましい場合もあり、その際は病院との連携を積極的に行っています。
脂質異常症は、血中の脂質(油)のバランスが崩れた状態をまとめた病気です。脂質にはLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(TG)が含まれます。脂質異常症とは、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が増えたり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減った状態を指します。体質の影響が強い家族性高コレステロール血症と呼ばれるものもあります。
脂質異常症は動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全(慢性腎臓病)などの具体的な病気につながる恐れがあります。治療の基本は食事の改善で、薬を使わずに改善できる場合も多いです。検査数値や年齢、併存症に応じて治療目標を設定し、薬の必要性を判断し、調整していくことが重要です。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超える状態を指します。痛風発作の原因として知られているため、馴染みのある方も多いかもしれません。痛風以外にも腎結石や腎不全(慢性腎臓病)のリスクとなるため、無症状でも注意が必要です。
尿酸はプリン体という物質が変化してできる老廃物の一種で、主に尿中から排出されます。プリン体は食事から摂取されるものが2~3割、体内で作られるものが7~8割を占めます。お酒にプリン体が多いというイメージを持たれるかもしれませんが、お酒は尿酸値上昇の一因であり、食生活の乱れが大きな影響を持ちます。また、尿酸は腎臓で排泄されるため、腎機能が低下している方は食生活にかかわらず尿酸値が高くなりやすいです。さらに、他の治療に用いる薬(利尿薬)の影響で尿酸値が上がることもあります。尿酸値、原因、併存症を総合的に評価し、尿酸を下げる薬の必要性を判断することが重要です。
痛風発作は関節炎の一種であり、他の関節炎が疑われる場合は整形外科に紹介することもあります。尿酸値でお悩みの方は、ぜひ一度ご受診ください。
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